▶幾重にも雑草が生い茂った寂しい宿に、人は誰も訪れないが、秋だけはやって来たのだなあ。
決まり字:やへ八重葎(拾遺集/恵慶法師・百人一首47番)Garu JP
チャイムが鳴らない 休日の部屋
通知も来ない 午後三時
カレンダーの予定は 白いまま
それでも窓の外 風が変わった
誰も来ないと 思ってたのに
一番律儀な 客が来た
八重葎 しげれる宿の さびしきに
人こそ見えね 秋は来にけり
誰も来なくても 秋は来る
約束もなしに 毎年来る
窓を開けて 迎えよう
今年も来てくれた 客人を
お茶を淹れて ベランダに出る
日ざしと虫の声 部屋に上がり込む
ひとりじゃないな 今日のところは
客が三人も 来てるんだから
寂しさってのは 客が来ないことじゃなく
客の来ない部屋を 閉め切ることだ
八重葎 しげれる宿の さびしきに
人こそ見えね 秋は来にけり
千年前 荒れた屋敷で
同じことに 気づいた人がいる
草だらけの庭にも 分け隔てなく
秋は来ていた
かつての豪邸 八重葎
訪う人も 絶えた庭
それでも秋は 忘れずに
その年も門を くぐってきた
八重葎 しげれる宿の さびしきに
人こそ見えね 秋は来にけり
誰も来なくても 秋は来る
千年前の庭にも この部屋にも
窓を開けて 迎えよう
いらっしゃい って言ってみよう
人こそ見えね……
秋は来にけり