▶私の袖は、引き潮の時にも海中に隠れて見えない沖の石のように、人は知らないでしょうが、涙に乾く間もないのです。
決まり字:わがそわが袖は(千載集/二条院讃岐・百人一首92番)Garu JP
「元気そうだね」って 言われた
今日も 上手に 笑えてた
誰も気づかない くらいに
私は 私を 隠せる
でも夜が来ると 潮が満ちる
部屋の底まで 沈んでいく
わが袖は 潮干に見えぬ
沖の石の ように
人こそ知らね 乾く間もなし
誰も知らない 涙がある
水面の下で 泣いている
明るい写真 並べながら
沈んだ夜は 載せなかった
「いいね」の数じゃ 届かない
深さで 沈んでいるのに
浅瀬の言葉じゃ 触れられない
この痛みには 名前もない
わが袖は 潮干に見えぬ
沖の石の まま
人こそ知らね 乾く間もなし
知られないまま 濡れていく
今日も水面は 静かなまま
千年前の 海の底にも
同じ石が 沈んでいた
誰にも見えない 涙のことを
歌だけが 知っていた
わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の
人こそ知らね 乾く間もなし
わが袖は 誰も知らない
それでもいいと 思えるのは
千年前から この涙を
知ってる歌が あるから
一人じゃないと 波が言う
沖の石の……
乾く間もなし