▶人里離れた奥山で、散り敷いた紅葉を踏み分けて鳴く鹿の声を聞くときこそ、秋の悲しさが身にしみる。
決まり字:おく奥山に(古今集/猿丸大夫・百人一首5番)Garu JP
真っ赤な夕日が 影を伸ばす
鬼ごっこは 途中でおしまい
どこからか風が 甘くなって
カナカナの響く 帰り道
どうして泣きたく なったんだろう
あの頃は名前も 知らないまま
奥山に 紅葉踏み分け
鳴く鹿の 声がする
千年前の 誰かがつけた
「秋は悲しき」 その言葉は
あのさびしさの 名前だった
仕事帰りの 公園で
金木犀に 足を止める
カナカナの響きは あの日と同じ
胸の奥が きゅっと鳴る
おとなになるほど 季節は足早に
永遠に感じた あの日あの頃
奥山に 紅葉踏み分け
鳴く鹿も 知ってたのかな
過ぎてゆく 季節の速さ
戻れない 秋のまんなかで
恋しいと 鳴いていたのかな
悲しいって 言っていいんだ
千年前から みんな言ってた
秋の夕暮れ 悲しいって
言葉にして 生きてきた
奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の
声聞く時ぞ 秋は悲しき
奥山に 紅葉踏み分け
鳴く鹿の 声が聞こえる
ひぐらしの響きも あの日の甘い風も
みんな誰かを 呼んでいる声だ
私も小さく 鳴いてみる
「帰りたいね」って それだけ
声聞く時ぞ……
秋は悲しき