右近は平安中期の女房歌人。醍醐天皇の中宮穏子に仕え、恋多き人生は『大和物語』に複数の逸話が残る。
捨てられた側の、涙をこらえた背中。表面は冷静な気遣い、本音は未練。
恨み言のかたちをした愛情、という原歌の屈折を、現代の女の強がりとして描きました。前日リリースの「嘆けとて」(男の強がり)と対になる一曲です。「私のことはどうでもいいの」と言った直後に「ほんとは今も好きなんだよ」と本音がこぼれる構造は、原典そのまま。恨むことすらできない夜明け前を越えて、それでも最後まで意地を貫いた右近の、涙をこらえた背中を歌にしました。
忘らるる(拾遺和歌集・百人一首38番)Garu JP
別に平気だよ ほら笑ってる
ひとりの部屋も ひとりの夜も
元気なフリなら 得意になった
泣き顔は誰にも 見せないから
「一生そばにいる」って言った
あの夜の声が 消えてくれない
忘らるる 私はいいの
忘れられるのは 慣れてるから
ただ心配なの 「永遠」を
神様に誓った あなたのこと
罰が当たっても 知らないから
新しい人は きれいな人ね
「おめでとう」って 笑ってみせた
上手に言えた はずなのにね
部屋に戻ると 涙が出た
「一生」なんて 軽い言葉
信じた私が 馬鹿みたいでしょ
忘らるる 身をば思はず
私のことは どうでもいいの
誓ひてし人の 命が惜しい
なんて強がり 言いながら
ほんとは今も 好きなんだよ
ほんとはね 罰なんかより
あなたが元気で いてほしいの
憎みきれない 自分のことが
いちばん憎い 夜明け前
忘らるる 身をば思はず 誓ひてし
人の命の 惜しくもあるかな
忘らるる 私はいいの
でも神様は 見てるからね
あなたの誓った 「永遠」のゆくえ
罰が当たる前に 思い出して
それだけ言って もう行くね
人の命の……
惜しくもあるかな