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百人一首 第19番・伊勢難波潟

伊勢出典:『新古今集』恋一・1049
難波潟 短き蘆の ふしの間も
逢はでこの世を 過ぐしてよとや
百人一首『新古今集』嘆き嫉妬・恨み難波潟(大阪府大阪市)

現代語訳

難波潟の芦の刈り根の節の間のような、ほんのわずかな時間さえ会えないまま、この世を過ごせとあなたは言うのだろうか。

決まり字:なにわが

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歌のものがたり

Story

時代背景

伊勢(872?-938?)は平安時代前期の女流歌人。伊勢守・藤原継蔭の娘で、その官名から伊勢と呼ばれた。宇多天皇の中宮・温子に仕え、若いころ温子の弟・藤原仲平と恋をしたが、仲平が別の女性と結婚して破れた。のちに宇多天皇の寵愛を受けて皇子を産み(早世)、さらに宇多天皇の皇子・敦慶親王とのあいだに、のちに歌人となる中務をもうけた。三十六歌仙の一人で、『古今和歌集』には女性として最多の二十二首が選ばれている。小野小町と並ぶ、平安前期を代表する女流歌人。この歌は『新古今和歌集』恋一・1049。家集『伊勢集』では、つれなくなった男への返事として伝わる。難波潟の蘆の、節と節のあいだ——ほんの指一本ぶんの短さ。それほどわずかな時間さえ逢ってくれないのか、と問い詰める。「蘆」「ふし(節)」「よ(節・世)」と縁語を連ね、景色の言葉だけで恋の切実さを言い切った、技巧と感情が一つになった歌。

詠み人の想い

長い時間がほしいと言っているのではない。蘆の節と節のあいだ、それくらいでいい。その「それくらい」さえ、あなたは無いと言うのですか——。願いを限界まで小さくしてみせることで、相手の冷たさがかえって大きく見える。泣きつくのではなく、問い返す。「過ぐしてよとや」の「とや」は、あきれと怒りと、まだ消えない期待が混ざった声。小さな時間を差し出せない人に、一生を預けていたのかという、自分への問いでもある。

歌詞にこめたもの

この歌でいちばん惹かれたのは、願いをぎりぎりまで小さくしているところでした。一日ではなく、一時間でもなく、蘆の節と節のあいだ。だから歌詞は、時計の数字ではなく、恋の中にある短い時間で書いています。名前を呼んで、振りむくまで。星がひとつ流れて、消えるまで。風が前髪をゆらすあいだ。世界はそんな一瞬で出来ているのに、あなたの一瞬に私はいない。サビは原歌をそのまま歌ったあとに「ほんの少しの 時間さえ/会わずに 生きろと 言うのですか」と自分で訳し、原歌の「ふしの間も」をそのまま合言葉のように繰り返しました。最後の願いも原歌の物差しで言います——「ひと節でいい 会いに来て」。Bridgeでは、潮の引いてゆく難波の入り江と、水に影を落とす一本の蘆を描き、そのひと節に恋をたくして送られた歌——と言い切って、声だけのサビへ渡しました。楽器を止めたサビは、千年前に送られたその歌を、裸の声で聴いてもらうための場所です。そのあと転調して一度だけ「会いに来て」と言い、最後はいちばん小さな願い「名前を 呼んでも いいですか」で終わります。原歌が問いで終わるように、この曲も問いで終わります。「また今度」は嘘ではないと思う。でも、会いたい人のためなら、人は一瞬を作れる。時間が無いのではなく、順番が後ろなのだ——そのことに気づいてしまった人の歌です。曲も、短く、速くしました。

歌詞

Lyrics

難波潟(新古今集/伊勢・百人一首19番)Garu JP

Verse 1

「また今度」が 今週も届く

長い時間が ほしいんじゃない

名前を呼んで 振りむくまでの

それくらいで いいのに

Pre-Chorus

蘆の節から 節へ

指でなぞれば 終わる

その あいだほどの 時間

Chorus

難波潟 短き蘆の ふしの間も

逢はでこの世を 過ぐしてよとや

ほんの少しの 時間さえ

会わずに 生きろと 言うのですか

ふしの間も ふしの間も

それすら くれないの

Verse 2

星が 流れて 消えるまで

風が 前髪を ゆらすあいだ

世界は そんな 一瞬で できてる

あなたの 一瞬に 私はいない

Pre-Chorus 2

言葉も 花も いらない

約束も しなくていい

まばたきひとつ あなたの顔 見せて

Chorus 2

難波潟 短き蘆の ふしの間も

逢はでこの世を 過ぐしてよとや

ほんの少しの 時間さえ

会わずに 生きろと 言うのですか

ふしの間も ふしの間も

それすら くれないの

Bridge

潮が引いてゆく 難波の入り江

蘆が一本 水に影を落とす

その ひと節に 恋をたくして

逢えない人へ 送った歌

Chorus 3

難波潟 短き蘆の ふしの間も

逢はでこの世を 過ぐしてよとや

ほんの少しの 時間さえ

会わずに 生きろと 言うのですか

ふしの間も ふしの間も

それすら くれないの

Final Chorus

難波潟 短き蘆の ふしの間も

逢はでこの世を 過ぐしてよとや

ほんの少しの 時間さえ

会わずに 生きろと 言うのですか

ふしの間も ふしの間も

ひと節でいい 会いに来て

Outro

過ぐしてよとや……

名前を 呼んでも いいですか

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