トップ百人一首 / 八重葎← 逢ひ見てのあらざらむ →

百人一首 第47番・恵慶法師八重葎

恵慶法師出典:『拾遺集』秋・140
八重葎 しげれる宿の さびしきに
人こそ見えね 秋は来にけり
百人一首『拾遺集』寂しさ荒れた宿(河原院)
八重葎 ジャケット

現代語訳

幾重にも雑草が生い茂った寂しい宿に、人は誰も訪れないが、秋だけはやって来たのだなあ。

決まり字:やへ

ミュージックビデオ

Music Video

歌のものがたり

Story

時代背景

恵慶法師(えぎょうほうし・10世紀後半)は播磨の講師を務めた僧侶歌人で中古三十六歌仙の一人。この歌は河原院——嵯峨天皇の皇子・源融が贅を尽くした大豪邸の成れの果て——で、歌人たちが「荒れたる宿に秋来る」という題で詠んだ一首。かつて陸奥の塩釜の風景を再現し海水まで運ばせた日本一の庭園が、八重葎(やえむぐら=幾重にも茂る蔓草)に覆われて荒れ果てていた。

詠み人の想い

「人は誰も訪ねて来ないが、秋だけはちゃんと来てくれた」。荒廃と孤独を嘆く歌のようでいて、結句「秋は来にけり」にはかすかな慰めと発見の驚きがある。見捨てられた場所にも季節は平等に訪れる——後の侘び寂びの美学につながる感受性。嘆きを裏返すと、秋が唯一の律儀な客人に見えてくる。

歌詞にこめたもの

誰も来ない荒れた宿に、秋だけは来た——という原歌を、秋を「客人」としてもてなす歌に発明し直しました。サビの客人は「まれびと」と歌います。遠くから稀に訪れて福をもたらす客を、日本では古くからそう呼びました。「寂しさとは客が来ないことじゃなく、客の来ない部屋を閉め切ることだ」——だから最後は窓を開けて「いらっしゃい」。孤独の歌を、孤独のもてなし方の歌に変えました。

歌詞

Lyrics

八重葎(拾遺集/恵慶法師・百人一首47番)Garu JP

Verse 1

チャイムが鳴らない 休日の部屋

通知も来ない 午後三時

カレンダーの予定は 白いまま

それでも窓の外 風が変わった

Pre-Chorus

誰も来ないと 思ってたのに

一番律儀な 客が来た

Chorus

八重葎 しげれる宿の さびしきに

人こそ見えね 秋は来にけり

誰も来なくても 秋は来る

約束もなしに 毎年来る

窓を開けて 迎えよう

今年も来てくれた 客人を

Verse 2

お茶を淹れて ベランダに出る

日ざしと虫の声 部屋に上がり込む

ひとりじゃないな 今日のところは

客が三人も 来てるんだから

Pre-Chorus 2

寂しさってのは 客が来ないことじゃなく

客の来ない部屋を 閉め切ることだ

Chorus 2

八重葎 しげれる宿の さびしきに

人こそ見えね 秋は来にけり

千年前 荒れた屋敷で

同じことに 気づいた人がいる

草だらけの庭にも 分け隔てなく

秋は来ていた

Bridge

かつての豪邸 八重葎

訪う人も 絶えた庭

それでも秋は 忘れずに

その年も門を くぐってきた

Drop

八重葎 しげれる宿の さびしきに

人こそ見えね 秋は来にけり

Final Chorus

誰も来なくても 秋は来る

千年前の庭にも この部屋にも

窓を開けて 迎えよう

いらっしゃい って言ってみよう

Outro

人こそ見えね……

秋は来にけり

← 第43番 逢ひ見ての 百首の地図 𝕏 でシェア 第56番 あらざらむ →