道雅は名門・中関白家の御曹司です。祖母は儀同三司母(54番)、父は藤原伊周。道長との政争に敗れて家は没落しました。恋の相手は当子内親王——三条院の皇女で、伊勢斎宮を務めた人です。斎宮退下後に二人は密かに恋仲になりますが、父・三条院が激怒。乳母に監視させ、二人の仲を完全に引き裂きました。 この歌は、その時のものです。会うことも、文を交わすことも許されない。「別れの言葉すら、直接言うことを許されなかった恋」の歌です。その後、当子内親王は出家して髪をおろし、数年後、23歳で世を去りました。
- 道雅は中関白家の御曹司(祖母=儀同三司母54番、父=伊周)。家は道長との政争で没落 - 相手は当子内親王——三条院の皇女・前斎宮。斎宮退下後に密かに恋仲になったが、三条院が激怒し乳母に監視させ仲を引き裂いた - 「別れの言葉すら直接言うことを許されなかった恋」。別れそのものより「別れを自分の口で言えない」ことの残酷さが核 - その後、当子内親王は出家(髪をおろす)し23歳で死去。道雅は荒れて「荒三位」と呼ばれた
友達づてに聞く「あの人、元気そうだよ」。知りたいのはそういうことじゃないのに、頷いて笑うしかない——現代の「人づて」から、この歌は始まります。送れないまま消した言葉、積もっていく下書き。「またね」って言った、あの日の声だけが耳の奥で鳴り続ける。 サビの「今はただ 想いを絶つよ それだけを 人づてじゃなく 君に言いたい」は、原典の完全な現代語訳です。そしてBridgeでは、髪をおろして恋を手放した千年前の人に触れます。言えない「さよなら」を胸に抱いて、それでも生きていった人。 道雅本人は、最後まで言えずに終わりました。だからこの曲のFinal Chorusでは、千年越しに言わせてあげます——「この歌にのせて 言わせてよ 最初で最後 ありがとう そして さよなら」。長い夜が、明けていきます。
今はただ(後拾遺集/左京大夫道雅・百人一首63番)Garu JP
友達づてに 聞いたんだ
「あの人 元気そうだよ」って
知りたいことは そうじゃなくて
でも頷いて 笑ってた
送れないまま 消した言葉
下書きばかりが 積もっていく
今はただ 想いを絶つよ
それだけを それだけをただ
人づてじゃなく 君に言いたい
最後くらい この口で
「さよなら」を 言わせてほしい
最後に会った あの日の君は
何も知らずに 手を振ってた
「またね」って言った その声だけが
耳の奥で まだ鳴ってる
責めたいわけじゃ ないんだよ
ただ終わらせ方が 見つからない
今はただ 想いを絶つよ
決めたのに 決めたのにまだ
人づてに聞く 君の近況に
心が まだ揺れてる
「さよなら」が 言えないままで
遥か昔 髪をおろして
恋を手放した 人がいた
言えない「さよなら」を 胸に抱いて
それでも 生きていった
今はただ 思ひ絶えなん とばかりを
人づてならで 言ふよしもがな
今はただ この歌にのせて
言わせてよ 最初で最後
人づてじゃなく 自分の言葉で
ありがとう そして さよなら
長い夜が 明けていくよ
人づてならで……
言ふよしもがな