平安前期。作者・文屋朝康は、六歌仙の一人で「吹くからに」(22番)を詠んだ文屋康秀の息子。親子で百人一首に入り、どちらも「風」を詠んだ。官位には恵まれなかったが、この清冽な情景歌一首で千年残った。
風がしきりに吹きつける秋の野で、糸を通していない露の玉が散り乱れる——ただそれだけの純粋な美の瞬間を切り取った。「つらぬきとめぬ(緒で貫き留めていない)」からこそ、露は自由に散り、散るからこそ宝石のように輝く。
糸に通されず散る露を惜しむのではなく、「留められないからこそ光る」と読み替えたのがこの翻案です。「糸でつなげば首かざり/風にまかせば流れ星」——保存するより、一瞬のきらめきをえらぶ。それが「つらぬきとめぬ」の現代語だと受け取りました。曲では千年前の歌声が最初から風に乗って流れ、最後に「わたしも歌う」へ引き継がれます。散っていくもの、ぜんぶ宝石——手放すことを肯定する歌です。
白露に(文屋朝康・百人一首37番)/Garu JP
白露に 風の吹きしく
つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
泣きそうな朝は 走ることにしてる
ひとりの野原 風が強くて
草のさきで ふるえる露が
私みたいで 目をそらせない
つないでおけない ものばかり
手のひらから こぼれていく
白露に 風の吹きしく
留められない 玉たちが
あんなに ひかるんだ
散らして きらめくままに
だれかが歌う 声がする
白露に 風の吹きしく
つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
涙も いつか 乾いていく
それがさびしくて うれしくて
糸でつなげば 首かざり
風にまかせば 流れ星
かんぺきなまま 残るものより
一瞬きらめく ほうをえらぶ
白露に 風の吹きしく
留められない 玉たちが
あんなに ひかるんだ
こぼれて 涙のままに
風のむこうで あの声がする
白露に 風の吹きしく
つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
doo da ba da doo ba
da di da du da da
千年前の 秋の野原で
おなじ光を 見てた人がいる
散るから ひかるのだと
風がまた 吹く
白露に 風の吹きしく 秋の野は
つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
白露に 風の吹きしく
それでも散る この玉のように
留めずに 生きてみたい 今日を
風といっしょに 駆けていこう
放して ひかりのままに
わたしも歌う あの歌を
散っていくもの ぜんぶ宝石
つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける