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百人一首 第94番・参議雅経み吉野の

参議雅経出典:『新古今集』秋下・483
み吉野の 山の秋風 さ夜更けて
ふるさと寒く 衣打つなり
百人一首『新古今集』寂しさ郷愁吉野(奈良県吉野郡吉野町)
み吉野の ジャケット

現代語訳

み吉野の山に秋風が吹き、夜も更けて、かつての都は寒々と、衣を打つ砧の音が聞こえてくる。

決まり字:みよ

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歌のものがたり

Story

時代背景

参議雅経=飛鳥井雅経(1170-1221)は鎌倉時代初期の公卿・歌人。父が源義経に加担して流罪となり、若くして鎌倉に下って源頼朝・頼家に仕えたが、のち上洛して後鳥羽院に見出され、1201年に和歌所寄人、『新古今和歌集』の撰者の一人となった。蹴鞠の名手で、その家系は飛鳥井家として蹴鞠と和歌の家になる。この歌は『新古今和歌集』秋下・483。古今集の坂上是則の歌を本歌に取り、「白雪」を「衣打つ音」へ——目で見る寒さを、耳で聞く寒さに変えた新古今らしい一首。「ふるさと」は生まれ故郷ではなく、離宮のあった吉野の古い都のこと。秋の夜更けに布を打つ砧の音は、唐詩以来、旅人や夫を待つ女の孤独を映す秋の風物だった。

詠み人の想い

「み吉野の山から秋風が吹きおろす。夜も更けて、古い都は寒々と、衣を打つ音が聞こえてくる」。感情の言葉はひとつも無い。秋風・夜更け・寒さ・砧の音——景と音だけを並べて、聞こえてくる「とん、とん」に、夜中に起きて働く誰かの営みと、それを聞いているひとりの寂しさを重ねた。本歌が「寒くなりまさる」と言い切ったところを、雅経は「衣打つなり」——寒さを言わずに、寒さの音を聞かせる。若くして父を失い鎌倉と京を行き来した歌人の、静かな夜の耳がここにある。

歌詞にこめたもの

かおるとクロコがこの歌でいちばん惹かれたのは「砧の音」——八百年前の夜中に、誰かがまだ起きて何かを打っている音だった。現代の夜にもその音はある。引っ越したばかりの部屋で窓を少し開けると、遠くで何かを打つ音がする。実家の台所の蛇口の音、まだ起きている母の足音、夜ごと回っていた洗濯機——「あれもたぶん 砧だった」。歌詞では砧のリズムを「とん とん と」というひらがなの音に変えて、サビのフックにした。原歌が寒さを言わないのに倣って、この歌も「寂しい」を言わない。かわりに残したのは「聞こえるうちは 灯りも消えない」——夜の底に響く誰かの生活音が、ひとりの夜をほんの少しだけ支える、その手触りだけ。歌詞に入れた意志は「今夜はこのまま 聴いていよう」と「眠るまで 数えていよう」の二つだけで、聴く→数える→眠る、と一方向に流れる。故郷を離れた最初の秋の夜に、いにしえの歌人と同じ音を聞いている——それがこの曲に込めた想い。曲はケルト民謡と日本の民謡を掛け合わせた。砧の音はバウロン(枠太鼓)の打音に、秋風はティン・ホイッスルと篠笛の掛け合いに——海を隔てた二つの民謡が持つ同じ哀愁が、夜なべの手のリズムに重なる。

歌詞

Lyrics

み吉野の(新古今集/参議雅経・百人一首94番)Garu JP

Verse 1

引っ越したばかりの 部屋の夜

段ボールの山と 秋の風

窓を少しだけ 開けてみれば

遠くで何かを 打つ音がする

Pre-Chorus

とん とん と 夜の底で

誰かがまだ 起きている

Chorus

み吉野の 山の秋風 さ夜更けて

ふるさと寒く 衣打つなり

とん とん と 響く音が

夜の輪郭を なぞっていく

今夜はこのまま 聴いていよう

Verse 2

実家の台所 蛇口の音

まだ起きている 母の足音

夜ごと回っていた 洗濯機

あれもたぶん 砧だった

Pre-Chorus 2

とん とん と 胸の奥で

何かがまだ 起きている

Chorus 2

み吉野の 山の秋風 さ夜更けて

ふるさと寒く 衣打つなり

冷えた手のひら 布団のなかへ

街の灯りが ひとつ消える

とん とん と まだ止まない

Bridge

砧の音は いにしえの

誰かの夜なべの 手のリズム

聞こえるうちは 灯りも消えない

窓を閉めずに 目を閉じる

Drop

み吉野の 山の秋風 さ夜更けて

ふるさと寒く 衣打つなり

Final Chorus

み吉野の 山の秋風 さ夜更けて

ふるさと寒く 衣打つなり

とん とん と 響く音を

眠るまで 数えていよう

ふるさとの朝が 混ざるまで

Outro

衣打つなり……

とん とん と

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