トップ / 百人一首 / 世の中よ← ほととぎす|ながらへば →

百人一首 第83番・皇太后宮大夫俊成世の中よ

皇太后宮大夫俊成出典:『千載集』雑中
世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る
山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
百人一首『千載集』雑秋無常嘆き山の奥
世の中よ ジャケット

現代語訳

この世の中に、逃れる道などないのだ。世を捨てようと分け入った山の奥でも、鹿が悲しげに鳴いている。

決まり字:よのなかよ

ミュージックビデオ

Music Video
MUSIC VIDEO — 近日公開

歌のものがたり

Story

時代背景

藤原俊成は平安時代末期から鎌倉時代初期の歌人で、定家の父。のちに『千載和歌集』を撰んだ。この歌は二十代後半、「述懐百首」の中で鹿を題に詠んだ一首。同じころ、同世代の西行が出家するなど、世を捨てて山に入る人が少なくなかった。俊成自身はこのとき出家せず、晩年になって出家した(釈阿)。

詠み人の想い

世の中というものは、逃れる道などないのだ。思いつめて分け入った山の奥にさえ、鹿が悲しげに鳴いている。「思ひ入る」は「思いつめる」と「山に入る」の掛詞。逃げ場を求めて山に入っても、そこにも悲しみの声がある。絶望とも、諦めとも、どこか受け入れとも読める、若い俊成の述懐である。

歌詞にこめたもの

この歌でいちばん大事にしたかったのは、逃げた先で鹿の声が「聞こえてしまう」ことでした。誰の声も届かない場所を探して逃げこんだのに、そこにも泣いている誰かがいる。それは絶望ではなく、ひとりではなかったという発見でもあると考えました。だから舞台を、夢を笑われて逃げこんだ学校の図書室にしました。本の森の奥で肩を震わせる知らない誰かの涙に、握りしめていた手がほどける。原歌は「道こそなけれ」、逃げる道はないと言うけれど、戻る道ならある。入ってきた後ろの扉ではなく、前の扉を自分の手で開けて、くしゃくしゃの紙をひらき、同じ夢をもう一度指でなぞる。大きな声で宣言しない静かな決意で、歌を結びました。ビートが最初から最後まで一度も止まらないのは、止まってくれない世の中そのものの音です。

歌詞

Lyrics

世の中よ(千載集/皇太后宮大夫俊成・百人一首83番)Garu JP

Verse 1

五時間目の 教室

進路の 紙を 読み上げられる

「現実を 見ろ」の ひとことに

小さな 笑いが 広がる

Verse 2

くしゃくしゃの 紙を 握って

後ろの 扉を すり抜ける

図書室なら 誰の 声も

もう 追いつけない

Pre-Chorus

本棚の 陰に 座ると

光の 中を 埃が 舞う

Chorus

世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る

山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる

逃げこんだ 本の 森でも

誰かが 泣いている

Verse 3

細く 途切れる 声が

棚の 向こうから 届く

すきまに 見えた 背中が

小さく 肩を 震わせる

Verse 4

わたしの ためじゃない 涙に

握りしめた 手が ほどける

逃げた 先にも

誰かの 長い 午後が あった

Chorus

世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る

山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる

抜け道の ない 道で

あの子も わたしも 泣いている

Bridge

世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る

山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる

Verse 5

涙の あとを 袖で 拭いて

来た 廊下を 戻る

前の 扉を この手で 開ける

集まる 視線の 中を 歩く

Final Chorus

世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る

山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる

くしゃくしゃの 紙を ひらいて

同じ 夢を もう一度 指で なぞる

← 第81番 ほととぎす 百首の地図 𝕏 でシェア 第84番 ながらへば →